by lieutenant_duck

連作 「夏休み」 (古川亜希)

夏休み

価値のあるものをえらんで生きてゆくことがときどき死ぬほどおっくう

八月の夜の出来事 夏休みだから目覚まし時計はいらない

ため息はずいぶん空気より重く いっこも浮かない赤い風船

風船をたくさんふくらませました それでちょっぴりやせたんですよ

とりあえず、きみの言葉はとりあえず、からはじまっていいや、でとじる

水族館の魚はさびしがってると思い込んでるふしがあるよね

人ごみのなかで「加藤」と呼びかけてふりむいたやつみんな加藤だ

わたしのことそんなに好きっていうんならなぜもう一歩さがらないのよ

かみなりが遠くの空でひかっててわたしはそれが怖くなかった

そのキスは煙草の匂い その煙草はわたしがさっき吸っていたもの

足を伸ばし壁にぴったりくっつけて寝転んでみる よこむきに立つ

液晶を保護するシールなんかより大事なものはあると思うよ

笑いながらごはんを食べた それはそれだけでいいそれだけのおはなし

いまここで手をつないだらどんな顔するのかなって思ったけれど

嘘つきは泥棒にまだなれなくてかっこつけてるゆうこちゃんです

白色のものはだいたい最後には黄色くなるのに集めてしまう

泣くほどじゃないけど好きなひとがいた わたしは笑ってばかりいたんだ


(2006.08.24)
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by lieutenant_duck | 2006-08-25 00:20 | 短歌